シルクロード日誌

日本シルクロード文化センターのブログページです。シルクロードに関する情報、コメント、旅日記などを綴ります。
きのう、大事なことを書き忘れました。

稀勢の里が弱い弱いといっても、弱くなった原因の一つは、けがでした。

2年前の初場所で初優勝して72代横綱に昇進。その次の場所でした。13日目の日馬富士戦で左胸を強打して負傷し、救急車で病院に運ばれましたが、奇跡の逆転優勝。その後からの11場所では優勝争いに絡むことはありませんでした。

 

身体と体をぶつけあって戦う相撲ですからケガは付き物です。

じゃあ、どうすればいいのかという対策が主催者側にはありません。

親方の多くは「稽古が足りないからケガをするんだ」というばかりの非科学さ。

 

いま大切なことは、「力士の公傷制度」です。ケガをしたら協会が責任をもって治す。

ケガで休む。これを保障することは経営者側としての当たり前の最低の義務です。休場しても格下げにしないで今までの地位を保証することです。

会社員が仕事でけがをしても「労災制度」があるように、相撲も労災だと位置付けることが協会には必要です。

 

もう一つは、これは皆さんからは賛成を得にくいのですが、本場所が多すぎます。巡業も多すぎます。

けがを治す時間と余裕がありません。治ったケガを癒す時間もありません。

一場所を10日くらいに短縮して、年4場所くらいに減らすことが必要です。

大相撲のテレビ中継となるとソファに寝そべって、絶対に動かない私ですから、相撲を見る機会が減ることは気乗りしないのですが、力士の相撲寿命を考えれば仕方がないと思います。

 

長い歴史を保ってきた大相撲ですから、それくらいの大改革をしないと、21世紀の奥深いところまで、いや、22,23世紀までずっと続けて行かれないかもしれません。それを確認することも私にはできませんが・・・

いま、相撲界は改革が必要です、小手先の改革ではなくて、です。

 

角界はいま大変動の時期に来てしまいました。

稀勢の里が引退し、鶴竜老い、白鵬も曲がり角に来ています。2020東京五輪までもたないかもしれません。

 

大関陣はもっと悲惨です。豪栄道と高安は今場所初日で私が予測したように、栃の心も含めて見事にそろって黒星を喫しました。結果も見てのとおりです。

 

それにひきかえ大関昇進を逃したものの、最有力の貴景勝と今回の玉鷲。

休場したものの復帰して勝ち越した御嶽海、それに続くのは北勝富士、阿武咲・大栄翔・炎鵬・劉電や阿炎などなど・・・

 

嵐、でさえ来年末に解散を宣言しました。

時代は確実に変化を示しています。

これを受けて立つ協会側は、力士よりも早く改革をすすめなければなりません。

それに加えて大切なことは相撲フアンの自己変革です。

外国出身の力士も含めて、大相撲に加わってきた若者たちを温かく迎えてあげてください。

迎える側が変わらなければ何も変わらなくなります。

お願いします。

 

| 大相撲を論ず | 09:32 | comments(0) | - |
いそがしかった2日間 マラソン大会と大相撲観戦

きのうの日曜日。

 

朝6時に起きて川崎の河川敷でスタートする開催される「月例川崎マラソン」へ。

いえ、別に出場するわけではありません。ご挨拶です。

寒風吹きすさぶ河川敷の寒さは強烈でしたが、続々と参加する参加選手の姿を見ると励まされます。わが家から多摩川通りをまっすぐ。電車では1時間かかるところを25分で着きました。でも軟弱者ですね、車で行くわたしは。

 

帰宅後、着替えてすぐに両国国技館へ。

そうです、大相撲の初日です。

国技館前の光景。チケットが手に入らなかった人、力士の「入り待ち」の人。

きょうの写真はすべてインターネットからの借用です。

 

 

かねてからの知った顔が、向こう正面最上段に近い一角に続々と集まってきます。私が国技館についたのは12時少し前。すぐにボスが来ました。

ボスとは、「シルクロード講座」でチベットの写真集を出してお話をしてもらったことのある写真家の須藤明子さん。まだ40をちょっとすぎた魅力的な方です。集まったのは20数人。

 

相撲はテレビで見るのが“桟敷席”並みでいいのですが、国技館で遠くから見るのもまた楽しいものです。最上段に近い席ですから、土俵まで直線距離でおよそ40メートル。ドライアイのわたしの眼ではなかなか鮮明に見えないのですが、独特の雰囲気があります。是非、国技館での観戦をおすすめします。

 

土俵は、「相撲協会」の八角理事長のあいさつがありましたが、驚いたことに一連の暴力事件に関わる出来事には一言も触れず。

なんという感覚でしょう。驚きました。

何とも味気ない協会あいさつ。私は写真の左の上、最上段でした。

 

稀勢の里が「行司差し違え」で負け。鶴竜と稀勢の里は3連敗したら引退でしょう。強くない力士は魅力がありません。

稀勢の里は北勝富士にあっけなく敗れる

 

 

マスコミや何らかの力でつくり出された“白鵬叩き”。

館内は相撲を良く知る人ばかり。白鵬に対する応援・声援は物凄いものでした。懸賞金がかかった数も白鵬がダントツ。

 

もう一度言います。「張り差し」や「かち上げ」は「禁じ手」ではありません。白鵬以外の多くの力士がやっています。白鵬がそれをやることに非難が集中するのであれば、この手を「禁じ手」にすればいいのです。

 

横綱の「品格」とはなにか。「品格」とは力士全体が負うべき「マナー」。スポーツマンにとってのフェアプレイの精神と同じこと。誰にでも求められるものが、いわゆる「品格」だと思います。「張り差し」は相撲の一つの「手」なのですよ。

「3連敗したら引退」と私が決めている鶴竜の相撲、勝ちました。

 

立行司は式守勘太夫。やはり刺し違えてしまいました。

この日は相撲観戦中のお酒が進んだので、終了後の席は遠慮しました。みなさんは30代から50代前半の働き盛りの若者ばかり。5000円で飲み放題・食い放題では勝てません。若者の会話にもついていかれません。まるで異次元の世界のようです。

 

寒いなかを、かなり満足して家路につきました。

| 大相撲を論ず | 07:05 | comments(0) | - |
能町みね子の貴乃花観、いや貴乃花の相撲観 ボルドーさんの引用から

またまた、ブログをお休みしていました。

きょうは、友人のバー・ボルドー(富川力動)さんが、フエースブックに掲載したものをそのままコピーします。

しかし、貴乃花親方の思想を理解できて、改めて「相撲」というものを、違った角度から見る機会を与えていただきました。

そういう意味では驚きですし、ショックです。

最初の段落は、ボルドーさんの感想、その次は、「貴乃花親方のお話」最後は、(故立川談志の娘さんの)評論家の能町みね子さんの引用です。

 

 

富川 力道

 

貴乃花親方が池口恵観氏にあてたメール全文
『週間朝日』が12
月12
日公開

能町みね子さんの指摘がネットユーザーの支持を集めている。今回はコメントをさせていただきたい。


「角道、報道、日本を取り戻すことのみ私の大義であり大道であります」
「国家安泰を目指す角界でなくてはならず“角道の精華”陛下のお言葉をこの胸に国体を担う団体として組織の役割を明確にして参ります」

能町みね子さんの分析は鋭い!支援者へのメールたけに貴乃花親方の本音に間違いない。そこに貴乃花親方 と白鵬の確執というより彼が目指すものが読み取れる。「相撲を取り戻す」の意味は今は強いモンゴル力士に向けられているが、「国家安泰を目指す角界でなくてはならず」「国士として力人として」などの文言からもわかるように最終的には外国人力士の追放を目指しているようである。第二次戦争中の言葉と文調をそのまま使っているのがいかにも右傾化である。そんな彼が相撲協会の理事長になったら相撲はどこへ向かうだろう。

 

以下全文

“観るものを魅了する”大相撲の起源を取り戻すべくの現世への生まれ変わりの私の天命があると心得ており、毘沙門天(炎)を心にしたため己に克つをを実践しております

 国家安泰を目指す角界でなくてはならず“角道の精華”陛下のお言葉をこの胸に国体を担う団体として組織の役割を明確にして参ります

 角道の精華とは、入門してから半年間相撲教習所で学びますが力士学徒の教室の上に掲げられております陛下からの賜りしの訓です、力と美しさそれに素手と素足と己と闘う術を錬磨し国士として力人として陛下の御守護をいたすこと力士そこに天命ありと心得ております

 今の状況、若い頃から慣れております報道とは民衆が報われる道を創るのが本分であると思いこれまで邁進してきております

 角道、報道、日本を取り戻すことのみ私の大義であり大道であります勧進相撲の始まりは全国の神社仏閣を建立するために角界が寄与するために寄進の精神で始まったものです

 

 陛下から命を授かり現在に至っておりますので“失われない未来”を創出し全国民の皆様及び観衆の皆様の本来の幸せを感動という繋ぐ心で思慮深く究明し心動かされる人の心を大切に真摯な姿勢を一貫してこの心の中に角道の精華として樹立させたいと思います。

敬白

 

「日本国体を担う相撲道の精神=貴乃花」

言葉尻とらえ隊297=能町みね子  『週刊朝日』12月12日から

 

日馬富士の暴力事件で、貴乃花親方を「固陋(ころう)な相撲協会に立ち向かう若き正義のヒーロー」としてとらえる見方には疑問を感じています。

 貴乃花部屋は、大阪場所の宿舎を宇治市の「龍神総宮社」なる新興宗教施設に構えていますが、ここのサイトには「ガンが消えた!!」という体験談が載っていたり、「姿を表わした龍神!!」として心霊写真みたいなものが載ってい・・・・

 

 自由だけれど、この宗教の創始者の辻本源治郎、その子で現・祭主の辻本公俊(よしとし)から名をとった「貴源治」「貴公俊」という力士までいるとなるとそうも言っていられません。

 

 貴公俊(兄)と貴源治(おとうと)は双子の兄弟で現在20歳。入門頃から有望視されており、弟は現在十両です。彼の3年前のツイッターを見ると、好きなラッパーの明言をリツイートしたり、友人と何気ない会話をしたり、ふつうの明るい若者と言う感じ。

 

・・・んでも、気に入らなかったら、それか?・?/それじゃついてこねーよ」「理不尽すぎる」と、何かに強く怒っている。

 実はこの直後の場所、彼の兄弟子の「貴斗志」が、幕下3枚目まで昇進していよいよ来場所は夢の関取かと言うところで唐突に引退しています。これについてはNHKアナも「師匠の貴乃花親方の話ですと・・・どうもこのまま休場から引退へと言うところだそうです。ここまで上がって来ましたが・・・」と訝しむように伝えており、貴斗志は何らかの理由で親方にクビにされたのでは?貴源治が理不尽だと怒っているのもこの件なのでは?と噂になったのです。

 

 その後まもなく貴源治はツイッターをやめ、1年前に別アカウントで再開。しかしそれは旭日旗をバックに「男は人生短く、日本人としての誇りを胸に」とのメッセージを掲げたもので、ツイートも絵に描いたように右傾化して

してしまいました。

 

・・・・・・ここまで切れ切れの引用でしたが。

 

  • miyearnzzlabo今週の文春、能町みね子さんの貴乃花親方に関する考察、すごい!

 

| 大相撲を論ず | 11:07 | comments(0) | - |
大相撲を論ずー12 ”ニッポンすごいデスネ″&大企業の品質データ偽造問題&モンゴル叩きの三題囃子

最近、テレビで“日本はここがすごい”という類の番組が非常に多くなっています。私もよく見ます。

外国から、その道の専門家や技術者などが来日して、日本の技術力や親切心や心配りなどを紹介する番組です。

 

これに気を良くしてばかりはいられません。

“自虐史観“という言い方が言われていますが、アジア太平洋戦争で日本が中国や朝鮮をはじめとしたアジア各国にたいして、侵略や残虐な仕打ちの数々を行ってきました。2千万人を殺害したという記録もあります。それらの歴史犯罪は、わたしたちのおじいさんやひいおじさんの世代が起こしたことなのです。

 

そのおじいさんたちが起こした侵略戦争を私たちの世代が反省することを“自虐史観“という言い方であざ笑います。それに合わせたような観点から、先にあげたナショナリズムが押し出されてくるのだと思います。

 

一方、世界に誇ることのできるものが日本の技術力です。シルクロードの旅で各国へ行くと、皆さん一様に日本の技術力を高く評価してくれます。TOYOTA、NISSANやSONYなどは、それを持っているだけでステータスになっています。

 

それがここのところひび割れてきています。

神戸製鋼、東芝、日産、東レなどでのデータ改ざん問題、そして新幹線「のぞみ」の台車が破壊寸前だったことが分かった、インシデント問題。

これは日本の、先進的だと言われた技術力が根本的に喪失する問題として重大です。

 

これらの傾向は、排外主義として警戒すべき事柄であり、このようなナショナリズムが自然発生的におこったものなのか、日本が世界から疑問を投げかけられる問題としてゆるがせにできません。

 

さらに言うと、日本支配層は、かつては朝鮮の「三国志」といわれる内乱につけ込んで、自らの支配を維持するためにハクスキノエの戦いを挑み、惨敗したことをはじめとして、秀吉の朝鮮侵攻、そして明治維新後の“征韓論”その後に続く日清戦争、日露戦争など、そしてアジア太平洋戦争へと一貫して朝鮮半島や中国、アジアへの侵略の道を突き進んできました。

ハクスキノエ(白村江)の戦いの攻略図

大韓民国 扶余・白馬江の流れ(下記HPより転載)

征韓論を議論する明治政府

日清戦争で日本軍歩兵の一斉射撃

ジョルジュ・ビゴーによる当時の風刺画(1887年)
日本と中国(清)が互いに釣って捕らえようとしている魚(朝鮮)を

ロシアも狙っている。

日露戦争で戦場となった地域の俯瞰図

 

さらに、かつていや現在でも“中華思想”がアジアと世界の脅威になっていますが、その中華思想に比して“小中華思想”という考え方があります。日本のソレが当てはまります。その志向がモンゴルにも適用させて“モンゴル叩き”あるいは“白鵬叩き”として表れているのだと思います。

 

 

“白鵬叩き”に関しては昨日のこのブログで引用しました。

日馬富士の暴力問題は、すでに司法の手に委ねているわけです。“モンゴル憎し”ついでに白鵬も悪いとするには、なんとしても無理があります。

日本の、日本人の一部のこのような短絡した志向には十分警戒しなければなりません。

それらの風潮・傾向を権力が操っているとしたら、怖いものがあります。

| 大相撲を論ず | 08:30 | comments(0) | - |
「白鵬たたき」にみる日本型“イジメ”の構造

12/14(木) 6:00配信

東洋経済オンライン

※きょうは、バー・ボルドーさんのフエースブックに掲載された、東洋経済オンラインの太田 肇 :同志社大学教授の論を転載します。少々長い文章ですが、写真も入れずに一気にお読みください(野口)。

 

 

テレビのワイドショーやネットニュースなどで日々報じられている元横綱・日馬富士の暴力問題だが、次第に「モンゴル人力士批判」、とりわけ「白鵬たたき」の様相を呈してきた。巡業先に「殺害予告の脅迫状」が届くまでエスカレートしたこの流れに対し、『承認欲求』の著者で大の大相撲ファンでもある太田肇氏の組織論の観点から異論を提起する。

標的にされた白鵬

 元横綱・日馬富士の暴行事件がマスコミをにぎわした。ところがいつの間にかバッシングの矛先が横綱・白鵬に向いていった。白鵬自身、暴行現場に居合わせた1
人というだけで事件とは無関係なはずなのに、事件の延長でたたかれるのは気の毒な気がする。たとえていうなら「別件逮捕」のようなものだ。

 たしかに嘉風(よしかぜ)との一番で行事の判定に納得せず、土俵の上下で抗議の態度をとり続けたのはいただけない。注意され、何らかの制裁を受けてもしかたがないだろう。

 しかし明らかな非礼はそれだけで、表彰式での発言や万歳三唱はそれ自体、社会的に糾弾されるようなものではない。にもかかわらず日本相撲協会は表彰式の言動について厳重注意した。テレビのコメンテーターや大相撲関係の委員たちもこぞって白鵬の「品格」を問題にし、なかには発言や万歳などを理由に出場停止処分にすべきだという人もいた。

 私はテレビで表彰式の模様を見ていたが、白鵬の言動に驚きはしたものの、むしろ拍手を送りたかった。「日馬富士や貴ノ岩を土俵に上げてあげたい」という発言からはライバル力士への思いやりが伝わってきたし、万歳三唱を求めたのも、大相撲界をおおう空気を少しでも明るくしようとする白鵬ならではの気配りが感じられた。実際に満員の観客は白鵬の提案に呼応して高らかに万歳三唱し、館内は大いに盛り上がった。

 しかし、だからこそ大相撲のお目付役や親方衆にとっては面白くない。自分たちのほうが「偉い」はずなのに、白鵬に場を仕切られ、観客まで味方につけられてしまったからである。ただ明白な非行やルール違反がない以上、表だってそれを非難できない。そこで「品格」という便利な口実を前面に出したのだろう。

白鵬へのバッシングは今に始まったことではない。朝青龍が現役の時代には白鵬は模範力士として持ち上げられていたが、ヒール役の朝青龍が引退に追い込まれてから世間の風向きが少しずつ変わっていった。日本人力士なら許されるような取り口や些細な言動が問題にされ、だんだんと「強いが品格に欠ける横綱」というイメージが植え付けられていった。

 それには伏線もある。たとえば人権問題には敏感であるべきNHKのアナウンサーや解説者さえ、大相撲実況中継のなかで事あるごとに「日本人の横綱がほしい」と口にし、館内でモンゴル人力士への差別的なヤジが乱れ飛んだときもそれをとがめようとさえしなかった。

■バッシングの裏にある、屈折した承認欲求

 私は「白鵬たたき」に日本社会特有のイジメの構造が象徴的な形で表れており、その背後には日本人の屈折した承認欲求が潜んでいるととらえている。

 人間には他人から認められたい、ほめられたいという承認欲求がある。しかし日本の社会では魅力的な個性や優れた能力、卓越した業績をたたえる「表の承認」より、出すぎず、和を乱さないことをよしとする「裏の承認」風土がある。そのため承認欲求は他人への嫉妬や意地、メンツというような屈折した形で表れやすい。そして自分の承認欲求を満たすため、「出る杭(くい)」を打ったり、他人の足を引っぱったりする。他人の価値を下げることで、自分の存在感を示そうとするのである。

 白鵬は恰好のターゲットになったわけだ。彼の突出した実力と業績は周囲の羨望を集め、外国人ということで日本人のナショナリズムにも火をつける。しかもNHKまであからさまに日本人びいきをするし、相撲協会からは厳重注意というお墨付きをもらった。そうなると、もうバッシングにブレーキはかからない。

 さらに都合がよいのは、相手が大横綱であるという点である。とくにマスコミにとって、表面上は「強者」でありながら反撃の手段をもたない相手ほど攻撃しやすい標的はない。強者と戦う「正義の味方」を演じられるからである。

朝青龍にしても白鵬にしても、彼らがかりにアメリカ人かイギリス人だったらこれほどたたかれただろうか、とついつい考えてしまう。

■学校や職場のイジメも構図は同じ

 こうして白鵬に対する集団的なバッシングが広がった。相撲と無関係な各界の重鎮からネトウヨ、そして一般の人たちまで、日ごろのうっぷんを晴らすかのようにSNSなどを使っていっせいに白鵬をたたきはじめたのである。

 その展開は学校や職場のイジメと驚くほど似ている。

 たとえば公立の小学校や中学校では、進学塾に通う勉強がよくできる子、海外留学の経験があり教師よりも英会話が堪能な子、音楽など芸術のプロをめざし英才教育を受けている子などがしばしばイジメに遭う。

 教師も人間なので、このような子がクラスにいると内心は面白くない。それがちょっとした言動に表れることがある。それを目にした生徒たちは教師のホンネを敏感に察知し、標的となる子の些細な落ち度をとらえて嫌がらせや仲間外しなどをはじめる。

 職場もまた学校と同様、わが国ではメンバーが固定していて閉鎖的なため、独特の慣習や序列ができやすい。そのため上司や先輩のお株を奪うような仕事をする人や、空気を読まない人が入ってくると職場ぐるみで嫌がらせをするようになる。しかも「敵」をつくって自分たちの結束を高めようとするため、嫌がらせはエスカレートしていく。

 高度成長期と違って、企業も経済も拡大することができないし、会社の中では役職ポストも削減されている。「表の承認」を得るチャンスが少なくなっているのだ。そのためグローバル化という世界の潮流と裏腹に、日本人の意識はますます内向きになっている。人々の活躍や成功をたたえるより、異質なものを排除し「出る杭」を打つ日本社会の暗部「裏の承認」がますます色濃くなっているように感じる。

 このような日本社会の現状を理解し、人々の心中に巣くう歪んだ承認欲求を直視しないかぎり、口先だけでいくらきれい事をとなえてもイジメはなくならない。正義漢ぶって白鵬バッシングに溜飲を下げている場合ではないのだ。

太田 肇 :同志社大学教授

| 大相撲を論ず | 09:45 | comments(0) | - |
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