シルクロード日誌

日本シルクロード文化センターのブログページです。シルクロードに関する情報、コメント、旅日記などを綴ります。
<< 陸上帝国から海上帝国へ、ユーラシア交通網の完成−2 | main | シルクロード日誌5《文化遺産としての「ナボイ劇場」建設の“真実”》その2 >>
シルクロード日誌5《文化遺産としての「ナボイ劇場」建設の“真実”》その1
  胡口靖夫●サマルカンド国立外国語大学教授

 一匹の妖怪が日本のシルクロード・ファンの間を徘徊している。史実に反する「日本人中心主義」の妖怪が。

 

 「共生」と「文化財保護」のネットワーク構築を目指すミニコミ誌『トンボの眼』の編集室から拙著『シルクロードの《青の都》に暮らす』(2009年、同時代社刊)でもっとも伝えたかったことを寄稿して欲しいという依頼を受けた。

 

いろいろあるので迷うが、「シベリア特措法」が成立した縁で、この「妖怪」について書かせていただいた。

 

 シベリア抑留の一部約2万5千人の日本人捕虜が、ウズベキスタンに送られ各地で数年間強制労働に従事させられた。その中の数百人が、タシケントでビザンチン風の壮麗な文化遺産「ナボイ劇場」の建設の“一部に参加”したことは歴史的事実である。

 

また1966年にタシケントを襲った直下型大地震で市内の公共建築がほとんど崩壊したのに、この劇場だけはビクともしなかったことも歴然としている。

 

 しかしこれらが短絡されて「捕虜でも勤勉に働いた日本人が基礎からレンガを積み上げて“建設”したからビクともしなかった」といういわゆる“シルクロードが生んだ日本人伝説”がウズベキスタンで生まれた。

 

それを「ナボイ劇場」のK館長から聞き、何の検証もせず1996年のTBSテレビ報道特集『知られざる親日国・ウズベキスタン』のレポーター役を務め、臆面もなく喧伝し続けているのは有名なジャーナリストS氏(日本ウズベキスタン協会会長)である。

 

 私も2003年に勤務校に赴任した当初は、不明を恥じ入るがこの“伝説”を信じて疑わなかった。ただその後何回か同劇場にオペラを見に行ったり、暮らしているサマルカンドの街中をみている間に疑問がわいてきた。

 

     機〆太平瑤錬隠苅娃或佑妊ペラ劇場としてはやや小規模だが、その高さや奥行き(正面の間口を1とすれば、奥行きは約2,5倍)がとても深いこと。ちなみに東京・初台にある新国立劇場の座席数は1800人である。

 

     供‘本人捕虜数百人が建設に従事したのは、1945年11月上旬から劇場の「こけら落とし」がおこなわれた1947年11月の「革命記念日」直前までの約2年間であり、労働力の不足は明白であると思ったこと。

 

     掘ヽ甲罎任澆織譽鵐積みの作業現場で、ウズベキスタンの熟練労働者でも基礎から大量のレンガをまっすぐに積み上げるのは技術的にも大変であると考えたこと。

 

     検,海譴盂甲罎僚斬襍設現場でみたことである。レンガやブロックを運び上げるのにクレーンを使わず、もっぱら滑車利用による人力での引き綱で行っていたことからヒントをえた。「ナボイ劇場」建設当時も基本的にこれとあまり違いがないのではないかと感じた。ターチカと呼ばれる一輪車も当時は使ったようであるが、いずれも「人海戦術」である。

 

     后.Ε坤戰スタン大使館から提供された「ナボイ劇場」完成直前の写真をみて気づいたことである。劇場正面の3カ所の大きな「アーチ工法」以外に、側面には実に大小様々な「アーチ工法」が多数みられる。日本ではこのような複雑な建築例をほとんどみたことはない。

 

     此,海譴泙審甲罎侶築現場でみたものである。「アーチ工法」を多用するイスラーム建築の伝統のあるウズベキスタンでも「アーチ工法」は、独特な木造の半円形の工具をあてがってレンガを積み上げてゆく。とても一朝一夕に習得できる技術ではないと直感したこと。

 

     以上のことなどから日本とウズベキスタン双方の文献資料を慎重に調査した。(明日へ続く)

| サマルカンド便り | 07:46 | comments(1) | trackbacks(0) |
コメント
管理者の承認待ちコメントです。
| - | 2015/06/19 7:41 PM |
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://blog.silkroad-j.lomo.jp/trackback/1321078
トラックバック
CALENDAR
S M T W T F S
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930 
<< November 2018 >>
LINKS
SELECTED ENTRIES
CATEGORIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
モバイル
qrcode
PROFILE