シルクロード日誌

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ウイグル人の生活習慣及び風俗・伝統あれこれ ―12

ウイグル医学

 

 新疆には近代(西洋)医学とは別に、伝統的な「ウイグル医学」が存在し、現在でも多くのウイグル人から信頼を得ている。以下は、2005年3〜4月、東京の世田谷区と「日本シルクロード倶楽部」の共催で開かれた「シルクロード・フェスタin世田谷」での、ホータン・ウイグル医学専科学校助教授ジュリエットさんの「ウイグル族の医学」と題する講演のレジュメから一部をご紹介したい。

 

 「中国の法律で承認されている伝統的な医学には、漢方医学・モンゴル医学・チベット医学・壮(チワン)医学とウイグル医学などがある。     

 

 ウイグル医学、古代ウイグル人の労働と生活経験の蓄積と知恵の結晶であり、豊富な実践経験に即した理論である。また2500年近い歴史を持っており、中国の多くの伝統的な医学の中でも、その特徴的な理論と治療方法により、重要な位置を占めている」とある。

 

 さすが中央ユーラシアを横断するシルクロードの地の伝統医学だと感心したのは、ウイグル医学の理論的な基礎が、“宇宙は土・水・火・風の4元素から成り立っている”というギリシアのアリストテレス哲学だということであった。アリストテレスの哲学がシルクロードを通してウイグルの地に輸入され、咀嚼され、ウイグル医学の基礎となる哲学理論として確立していったのである。

 

 さらに以下の記述は、「日中友好新聞」第2073号(2006年9月5日付)に掲載された「春夏秋冬の中医学 自然界に感謝を込めて」第10回(最終回)における中医学講師・路京華氏の文章を引用させていただいたものである。

 近代医学とウイグル医学や中医学(中国医学いわゆる漢方のこと)あるいは蔵医(チベット医学)など民族医学との決定的な違いは、医学とともに哲学を包摂することであろう。そのために抽象的な思惟、手法をとることが多く、科学的ではないという誤解を受けやすい。

 

 しかし民族伝統医学は、四診によって集めた情報からニセモノを取り除き、正しいものを残して情報を分析し、理論的な弁証によって処分を下す、というようにあくまでも科学的なプロセスを経るものである。ただし、この過程は2人の医師が行なうため、その医師のレベルや資質によって、同じ患者を診ても処方が異なることになる。その分、医師はより深く研鑽し続ける義務を負う。

当時の写真は、すでに無くなっています。

きょうは、あまり関係のない写真で我慢を!

 

 似たような症状であっても患者Aと患者Bでは生活習慣も性格も異なる。それを踏まえて診断できなければならない。その上で、数多ある処方の中から最も適切なものを選び、一味ひとあじの生薬を慎重に吟味して巧みに配合し、微妙な用量をも加減しなければならないのである。

 

 ここまで到達するには、まさに医学の範疇を超えて、自然哲学をも理解しなければならない。民族医学では、ただ学ぶのではなく、悟ることが肝要とされる所以である。

 北京の故宮には太和殿、中和殿、保和殿と「和」を、外には天安門、長安街などの「安」を強調している。これは、「内和外安」、和すれば国家は安定する、という意味を持つ。「和」とはバランスと言い換えてもいい。バランスを重んじる。医学に通じる点である。

 

 民族医学の考える「病」とは、体がバランスを失っている状態を指す。足りないものを補い、余分なものを取り除き、熱には清を、寒には温をもって、その人本来のバランスを取り戻すことを治療の最終目的とする。これぞ「内和外安」である。

 

  実際にウイグル医学がどの程度の実績を持っているのか、現代の疾病にどの程度効果があるのかは、よくわからない。知り合いのウイグル人が白血病でウイグル医学の先生に診てもらったが、ウイグル医学では手も足も出ないといわれたということもあるが・・・・この“知り合い”は、その後、私の旅の跡をずっとついてきて、「日本で白血病を直してほしい」と依頼し続けていた。だが、私にはどうすることもできない。お詫びして引き取っていただいた。その患者は、その後、どうしただろう。

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