シルクロード日誌

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東西トルキスタンとモンゴル高原及び新疆の少数民族  2007年7月 野口信彦

東西トルキスタンとモンゴル高原及び新疆の少数民族

                        2007年7月 野口信彦

中国ではどうでしょうか。

 

新中国の成立に先立つ1947年、最初の少数民族の自治区として内モンゴル自治区が設置されました。ここは1936年に49の諸公が集まって清朝に服従したことに由来する地域的単位なのです。内モンゴル自治区では、農耕化や牧畜の定住化などによる沙漠化、高等教育の機会を得るために漢語が重視されて、モンゴル語を喪失するといった問題が顕在化しています。自民族の言語を失うということが、民族の喪失につながることを予測できるということは、悲しいことです。さらに、そのことにたいする議論が起きているのか問いたいとも思っています。

 

※2020年のこんにち、中国政府は内モンゴルで「学校教育などすべての面で、モンゴル語をやめて、中国語の普通語(標準語のような意味)を使用するよう」に決定しました。これに対して、内モンゴルはもちろん、日本でもモンゴル人を中心として抗議と反対の集会や運動が起こっています。

 

新疆ウイグル自治区ではバインゴル・モンゴル自治県、ボルタラ・モンゴル自治州、ホボクサイル・モンゴル自治県にモンゴル人が集中しています。

青海省には海西モンゴル族チベット族自治州、

甘粛省に粛北モンゴル族自治県、

吉林省に前ゴルロス・モンゴル族自治県、

黒龍江省にドルベト・モンゴル族自治県、

遼寧省にカラチン左翼モンゴル族自治県、阜新モンゴル族自治県があり、他集団との微妙なバランスが保たれています。

ほかに元朝の駐屯部隊の系譜をひく人びとが四川省や雲南省通海県あるいは新疆に在住しています。

新疆ウイグル自治区の中のボルダラ州の位置

 

さらにモンゴル国に北接するブリヤート共和国では、ソ連時代からロシア化が著しく、ペレストロイカ以降、文字や言語などほんらいのモンゴル文化を復興する動きが強まっています。

ロシア内のブリヤート共和国

 

またヴォルガ河下流域にすむカルムイク人は1630年頃に移動したトルグート・モンゴルが1771年、イリ方面に帰還する際に現地に残った集団です。帰還した人びとの落ち着き先である新疆ウイグル自治区のトルグート人との間でペレストロイカ以降、活発な文化交流が行われるようになりました。

オイラトの最盛期のエセン・ハーン時の最大版図。

 

このように、ソ連崩壊後の民主化の流れは、モンゴル民族主義を高揚させ、各種行政区界を越えたモンゴル系諸集団の交流を促しています。その中心的存在としてモンゴル国が注目されたこともありましたが、現在では援助依存率が世界5位といわれるまでの被援助国となり、リーダー役を果たすことは困難だろうといわれています。また中国や韓国からの資本進出が目覚しく、漢族や中国籍モンゴル族、また韓国人にたいする暴行事件が多発する傾向がみられることは残念なことです。

 

モンゴル人の飲食文化の特徴と習慣―

ミルクティ

 

紅茶にミルクを入れ、少しの塩とバターを入れます。これはモンゴル人に欠かせないものです。

馬から馬乳をとります

馬乳!

 ※ここまでは、2019年8月。モンゴルで筆者撮影

 

馬乳酒

ケムズとも呼ばれ、牛、馬や羊の乳を発酵させてつくるモンゴル人愛飲のものです。主に7月から9月ころにつくり、馬乳酒は皮袋で保存します。まず、ラクダや牛の皮を剥いで毛を切り、火で炙る。その皮を10日間、燻製する。出来上がった皮を袋にし、熟成した馬乳酒を入れる。そうすると、遊牧生活をするうえで多くの利点があるのです。ひとつは運びやすいことと、漏れない、圧力に強い、馬に乗せて運ぶのが簡単。もうひとつは長持ちするということです。1つの皮袋は70〜80年も使えるという便利なものです。

 

客に馬乳酒を出すときは、主人が「敬酒歌」を歌ってから先に一口飲み、客に出します。また「ハダ」あるいは「カタ」を上げる習慣があります。ハダは長さ1・5〜2辰阿蕕い稜鬚ど曚如大切な客や年長者に差し上げるもの。それによって健康で長生きするように、すべてのことがうまくいくようにと祈り、客に感謝の気持ちを表すものです。現在では、結婚式のときにもハダを捧げるようになっています。

わたしがネパールの山のぼりに行くと、チベット仏教の影響の色濃いネパールでもチベット族のシェルパの習慣として残っているのです。

 

名前をつけるのも面白いものです。男の子には、祭り、幸福、結実、勇士、知恵者、金、銀などの名前をつけることが多く、女性には太陽、月、星、花、春花、真珠、玉石などの名前をつける場合が多い。子どもが生まれてから父親がはじめて見たもの、あるいは接したものを子どもの名前にすることが多いのですが、かわいそうなのは「羊のフン」という子どももいました。

 

日本では、なんとひどい名前だろうと思われるでしょうが、そこが違うのです。遊牧民にとっては、家畜のフンは生活を営むうえでの貴重なもの。わたしのチベット生活のなかで、テントを張ることといっしょにヤクのフンを拾うことが大切な仕事だったのですから・・・・・

主食は肉やKose=モンゴル語で「闊慈」。羊の頭や脚をお湯で煮て小麦粉を加え、2〜3時間煮て、夕食時によく食べます。カルシウムを補って、体を強くする効能があるといわれています。小麦粉にイースト、ミルク、チーズを入れてフライパンで焼いた焼餅などもあります。

 

ケーズ(中国語で「馬腸」)というものもあります。モンゴル人もカザフ人と同じようにケーズをよく食べます。馬や牛の腸に岩塩をつけて、燻製した肉を入れたもの。腸詰のようなものですが、腸詰より太く、長い。味はしょっぱいですが、冬、体がとても暖まります。ソーセージですね。冷蔵庫がないので馬や牛の肉を燻製し、腸に入れて保存します。肉をケーズにしておくと、臭くならず、長持ちし、運びやすいからです。

 

民族の歴史と現代

中国領内のモンゴル族はおもに内モンゴル、新疆、黒竜江、吉林、遼寧、青海、甘粛省などに居住しています。彼らはモンゴル高原に住む遊牧騎馬民族だったので、かなり広範囲に住んでいます。1年の大部分を馬上ですごし、それだけに騎馬民族の誉れ高い民族でしたが、今では定住生活をする人が多くなっており、漢化も進んでいます。人口は約500万人。

大モンゴル国のうちの「元」の版図

中国の内モンゴル自治区

 

そのモンゴルの元王朝が100年に及ぶ中国統治から明によって漠北の地に追いやられると、内部分裂や部族間の戦争が絶えず起こりました。モンゴル族は17世紀まで、主に大沙漠の北方にある外モンゴル(現在のモンゴル国)、大沙漠の南方にある内モンゴルと沙漠の西側のアルタイ山脈を越えた新疆のジュンガル盆地などの3地域に広く居住していました。

内モンゴルの草原

 

かつてモンゴル族はシャーマニズムを信仰していましたが、13世紀中期以降にチベット仏教が伝わり、明・清両王朝時代を通じてモンゴル全域に急速に伝わりました。そのため、各地に寺院が建ち、出家する僧が増えたのです。このようにチベット仏教はモンゴルの政治、経済、文化に大きな影響を与え、仏はよみがえり不滅であるとする活仏転生制度もモンゴル地域で確立していきました。

モンゴルは2200年の歴史を誇る国です。チンギス・ハーンが1206年に建国してからだけでも約800年の歴史を持ちます。

 

 

1911年、中国に辛亥革命が起こり中華民国と同時にモンゴルも独立を宣言しましたが、まもなく初代中華民国総統の袁世凱軍に攻め込まれ、漢・蒙の両軍は大沙漠で激突を繰り返しました。モンゴル人民共和国の成立は1924年。1992年の第12回大会人民フラル第2回議会で国名を「モンゴル国」に改称したのです。

蒙古連合自治政府主席デムチュクドンロブ(徳王)

 

 

中国領の内モンゴル自治区においては、文革期の66年に「内モンゴル人民革命党」事件がデッチ上げられ、5万人のモンゴル人が処刑・殺害され、40万人が逮捕されるなど、血の粛清が行われ、それ以外にもモンゴル民族の統一国家をはかったいくつかのグループが弾圧されました。

内モンゴル革命党の旗

内モンゴル出身の楊海英(静岡大学教授)が著した著書

 

中国共産党は文革後「内モンゴル人民革命党事件は陳伯達のデッチ上げであり、冤罪である」として、そのほとんどの名誉を回復しました。ロシア・シベリアにもモンゴル人による「ブリヤート自治共和国」があり、中国はこれに内モンゴル自治区を加えた3つの国がひとつになる運動を警戒しているのです。

1945年9月に内モンゴル独立宣言をした内モンゴル人民共和国の国旗

 

 

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