シルクロード日誌

日本シルクロード文化センターのブログページです。シルクロードに関する情報、コメント、旅日記などを綴ります。
―62  ドンガン――ウイグルと回族の戦争etc

 オスマンのおばさんの回想は続く。

 

 1933年頃、ウイグルと回族の戦争があった。回軍の司令官マージョン・ヨウン(馬仲英)は数万人の回族軍の司令官だったが、この戦争でみな死んだ。漢人に知られていない墓がある。

 

 その場所は鉄道のトルファン駅の近くに墓があるが、青海や蘭州からも回族が大挙やってきてお祈りをするとのことである。現在では政府はこれを禁止しているが、みな秘密裏にやってしまうという。毎年1度、その墓場に行って行事を行なうという。

 

 ※新疆での馬仲英の戦いには、スヴェン・ヘディンも巻き込まれ、彼自身は馬に面会したことがないが、この件に関する詳細な記録を残している。この記録の邦訳に、小野忍訳『馬仲英の逃亡』(初版;改造社、1938年。新版:中公文書、2002年)がある。

馬仲英

 

 回族の由来にはいくつかの説がある。私は、回族の祖先はスキタイ・サカの末裔が漢族と混血したと推測されているが、チンギス・ハーンが中央アジアを劫略した際に、なんらかの技能を持った人たちを大勢モンゴルに連れ帰った。その末裔が漢族と混血して回族が形成されたとの説が有力である。ウイグル人の研究者グリさんによると、アラビアなどから広州経由で中国大陸に入り、混血を重ねて今日に至ったと主張している。

 

 漢族の女性でメッカに行ってアラビア人と結婚して帰らなかった人たちは「トゥルプ・カルガン(turup qalghan)」と言われた。それで、新疆に帰らなかった人たちをウイグル語でトルカガンと言ったのが、発音の変化によって、近年の「ドゥンガン(東干)」となったともいわれる。いま、中央アジアでも「ドンガン」と呼ばれている。

 

 だから、アラブ人は回族人を非常に大事にする。

 この回族の由来についての話は、まだまだ未解明の部分が非常に多いので、今後の課題にしておきたい。

 

※パミール中央アジア研究会で回族の専門研究家を呼んで話してもらったとき、私が「大きい回族と小さい回族は、どうしてできたのですか?」と聞いたが、彼はそれを知らなかった。それくらい未知の部分が、まだ大きいということである。大学の研究室で机に向かっていては分からない。

 

 私はここで彼女の母親が数珠を持っているのに気がついた。てっきり仏教のものだと思ったが、やはりそれは違た。チベットでは数珠の1つの珠を動かせば、お経を1回読んだことになるとのことだが、ここのお母さんも数珠の球を1つ1つ動かしていた。1日、何十回もアッラーを唱えることになるという。

 

 後日、「その数珠は仏教でも使っているのですが・・・」と聞いたが、答えはNOであった。もう一度聞いたが、これもイスラム教にある数珠だという。その数珠は長いものは111個なのだが、短い33個というものもある。

持っているのは数珠ではありませんでした

| シルクロードの光と影 | 09:57 | comments(0) | - |
―60 回族とは

 以前から回族のことについて知りたいと思っていた。

今日の写真はすべてインターネットの写真です

 

 トルファン市内に住んでいるウイグル族の年配の女性を紹介してもらった。彼女は地域の女性関連団体の幹部をしている。さしずめ、町内会の婦人部長といったところだろうか。隣近所はみな回族だというので、回族についてのお話を伺った。後述するピシャンの回族のモスクのアホン(礼拝指導者)の話の内容との食い違いに注目していただきたい。

 

 

 回族の言葉は漢語である。けっして豚肉を食べないのは他のムスリムと同じで、1日に5回礼拝し、ラマザン(断食)をし、礼拝することと断食するのも他のムスリムと同じである。

中国における回族の分布図

 

 

 回族のモスクは2つある。2つの派に分かれている。

大きいモスク(東大寺)」の習慣はウイグル人とほぼ同じで人数も多い。習慣はウイグル人に近い。

小さいモスク(西大寺)」の習慣は漢族と似ている。数は少ない。習慣は漢民族に近い。

この大小のモスクは昔から相互に結婚できない。葬式のやり方も違うといわれている。

「大きいモスク」は金持ちが多いので、牛を殺してみなに食べさせる。

「小さいモスク」の貧乏人は羊を殺してみなに食べさせる。

 

 トルファンのウイグル人は、葬式後、5日後に牛や羊を殺して「nazir」(ナズル。地方によって違うが、トルファンでは葬式が終わって5日目に礼拝指導者をはじめモスクの人たち、親戚やたくさんの人たちを呼んで食事を食べさせ、死者の霊魂に祈る)をする。

写真は「中国各民族」中国民族撮影芸術出版社による

 

 ウイグル人は葬式の日には食べ物は出さない。しかし、大きいモスクの回族人は、葬式が終わると葬式に参列した人びとをごちそうする。それぞれ自分の経済状況にあわせて牛や羊を殺して、葬式に来てくれた人たちを招待する。特にモスクのアホン(礼拝指導者)を特別に尊敬し、金やプレゼントを持たせる。ラマザンの時にはアホンを特別に大切にする。

 1つの村には何人かのアホンが必ずいるが、もし、自分の村にアホンがいなければ、近所やほかの村からアホンを呼んできて、ごちそうしたり、たくさんプレゼントを持たせる習慣がある。

 

 回族とウイグルの習慣は違う。回族はモスクのアホンが農村にいれば出てもらうが、いなければアホンのいる村まで呼びに行ってお祈りしてもらう。クルバン(犠牲)祭りやラマザン(断食)の祭りでは、牛や羊を殺してまずアホンに食べてもらう。アホンが食べないとその家族は絶対に食べ物に手を出さない。アホンが来て食べるまで家族全員で待っている。1日中でも待つことになる。

 

 

 ラマザンの時、ウイグル人は夕食時にアホンや長老を呼んできて、クルアーンを読んでもらう、それからごちそうをする習慣がある。回族人は朝の食事の時に(だいたい夜明け前の3〜4時ごろ)真夜中でもアホンを呼びに行って、出した食事を食べてくれるまで待っている。貧乏な人でも100元を出すとか、羊の肉の半分を出すなどする。このようにアホンをとても大切にして、自分の信仰心を表す。

 

 親は結婚相手を決めることを大事にする。家柄と家同士が同じくらいの財力であれば結婚できるが、レベルが違ったら結婚できない。家系(家柄)をとても大事にするので、自分の家系に合うような人でないと結婚しないことが多い。回族人のあいだでは、女性は30歳までに結婚しないとよくないと思われている。トルファンの回族は、自分の村で自分の家系に見合うような結婚相手がいなくて、娘が年取って未婚ならば、達坂城(ダーバンチャン)やウルムチの回族と結婚させることもあるという。とにかく年をくった娘は遠いところに結婚させるという習慣がある。

| シルクロードの光と影 | 05:20 | comments(0) | - |
―59 HIV感染者の未申告9割

 

 エイティガル寺院。

 ※新疆では多くの地域が国境に接しているので必然的にHIVが入り込んでくるという。

 

 根強い偏見が拡散助長

 

 06年10月24日付の日本の企業関係者向けの新聞「日中新聞」には、次のような記事が掲載されていた。

HIV感染者の未申告9割  根強い偏見が拡散助長

 

 このほど開かれた「中国健康連盟成立大会」で、国内におけるHIV感染状況に関するデータが報告された。

 

 それによると、中国にはHIV感染者及びエイズ発症者が86万人存在し、昨年は1日あたり192人の割合で感染者が増加していた。しかし実際に関連の行政機関や医療機関に感染の申告を行なっている患者は感染者全体のわずか8%、検査を受けた感染者及び発症者は全国でわずか16万人、そのうち各医療機関が資料を把握している患者はわずか5万人。以下略。

 

 ※感染者は実際にはこの数倍に達するであろう。

 

 05年に新疆再訪の際には、こんな話が出まわっていた。

 

 新疆ではレストランでの食事時には例外なく羊の肉を食べるので、爪楊枝が必需品になっている。最近ではエイズ保菌患者が、その爪楊枝を使ってから、もとの楊枝入れに戻しているといううわさが出まわっているので恐慌をきたしているという「噂」である。

 

 ※はてさて、2017年の現在では、どのような状況になっているのか見当もつかない。各自治区の担当者が真実の報告を中央政府に伝えているとは考えられないからである。

| シルクロードの光と影 | 05:41 | comments(0) | - |
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