シルクロード日誌

日本シルクロード文化センターのブログページです。シルクロードに関する情報、コメント、旅日記などを綴ります。
中国におけるスパイ奨励法の制定は、シルクロードに何をもたらすか――この地獄をどうすれば解決できるか――

 東トルキスタン共和国政府が崩壊してから、すでに75年近くが経過しています。しかし、時間の経過と運動の形態を超越しても、この運動の現代に与えた影響ははかりしれません。東トルキスタンの民族独立運動は、現在のウイグル民族の歴史を貫く太い幹のような存在であり、現代中国にとってきわめて厄介な桎梏となって立ちはだかっているのです。

 

 新疆には数十万の人民解放軍が駐屯しています。そのほかに、即座に軍隊組織として編成される数十万の新疆生産建設兵団が存在し、さらに、司法・行政・文化・教育などありとあらゆる少数民族支配の法の網がかぶせられており、中国共産党による支配の構造は、いささかの揺るぎも見せていません。しかし、“民族の自治と独立”の声は、新疆・チベット・内モンゴルの諸民族の胸に深く刻まれており、欧米各国の「チベットのダライ・ラマ支持決議」のように、世界各国の世論は彼らを支持しています。

 

 現代中国の民族問題をめぐる国際政治を見るうえで、1944年の東トルキスタン共和国政府の樹立と崩壊の過程を正しく認識・評価することは、多民族国家中国に組み込まれたトルコ系諸民族を理解し、21世紀の中国の未来像を把握する上で、大きな意義があるものと思えます。

 これまで数限りないムスリムとしての尊厳を傷つける暴虐がおこなわれてきたことが、民族の独立と分離の機運をいっそう高めたことも事実です。

 

 さらに、1964年から96年まで46回にわたって実施されたロプノールでの核実験によって、被害者(推定17万人の死者、健康被害者129万人以上という説もある)が続出するなどしている。この地域にはウイグル人など少数民族の医師はもとより、一般の医師も立ち入ることができないでいます。中国政府は、この地域に放射能汚染や後遺症の存在を認めないどころか、海外の医療団体の調査・立ち入りも規制しており、すべてが隠蔽されているのが実情です。

 

 あるとき、あるオアシス都市で友人やその家族とレストランで会食する機会がありました。友人の甥っ子の青年が一人離れて食事をしています。「一緒に食べようよ」といったのですが「いいえ、私が一緒に食べると皆さんに移りますので・・・」といいます。彼はロプノールの核実験による被害背で甲状腺がんだったのです。しかも、それは伝染病だと思っていたのです。その3年後に彼は、離婚してこの息子との生活を唯一楽しみにしていた母親を残して一人他界しました。そして彼の母親もその兄弟たちの多くも甲状腺に障害があるのです。

 

 私自身も2011年12月末、厳寒のタクラマカン沙漠周縁の研究・取材旅行に行った際、ロプノ―ルの核実験場から数百キロ離れたロプノ―ル村に近づいたのですが、きわめて厚い当局の壁に阻まれて、何ひとつ取材することができませんでした。

 このときの旅では、過去の核実験による被害状況や影響などを調査する目的はありませんでした。単独行の、1人のシルクロード研究者には、そのような動機もなく、必要性もなかったのです。また、道行く村びとに、ロプノール村が19世紀まで仏教を信仰していた理由などを聞こうとしても、村人は私が外国人と分かると、一様に首を振って避けて行き、電気のついていない部屋がたくさんあっても「満室だから」と宿泊を拒まれ、100km近く離れたコルラまで往復せざるを得なかったのです。

 

 なおこの核実験に対して日本人のある右翼的なグループは、「中共倒せ!」と中国の共産党とその政府攻撃を最大の目的としているのですが、核実験反対を言うのであれば、ロプノールの核実験での被害者救済と治療および西へ2000kmほど離れたカザフスタンのセミパラチンスクでのかつての核実験と被爆者援護をも同様に扱うべきであり、さらには全世界の核保有国の核兵器廃絶をも含めて主張すべきなのですが、なぜかそれはしないで、中国政府への攻撃のみに集中しているのか不可解としか言いようがありません。

 

敦煌莫高窟の涅槃像

敦煌の小さな砂山

寧夏回族自治区・銀川の西夏王陵

炳霊寺の石窟仏像

夕闇の炳霊寺

| シルクロードの光と影 | 10:18 | comments(0) | - |
中国におけるスパイ奨励法の制定は、シルクロードに何をもたらすか ――新疆ウイグルの現状――

 一般に日本では「スパイ」というと、“人道にもとる、人から忌み嫌われる卑劣漢”だという考えが多いようです。

 かつて私は、ウイグル人たちとの交流のとき「野口先生はスパイのようですね」と言われて激怒しかけたことがあります。よく聞いてみると、彼らの世界で「スパイ」とは“国・民族のために英雄的に働く素晴らしい人”ということだということのようでした。

 このように、中国も含めた外国では、“スパイは国を救う英雄”との考え方が多いようです。イギリスの映画「007」のように。

 

 数年前、日本でも安倍政権によって「秘密保護法」が採択されました。この法律は、政府の言う“スパイ防止が目的とされたもの”ではなく、戦前戦中の「治安維持法」に共通した内容だったので多くの反対がありました。

しかし、こんどの中国におけるスパイ法は全く違うようです。違うというより、とんでもない違和感を覚えました。新疆ウイグルやチベットなどの少数民族が多く住む地域では、もうとっくにやられていることです。

 

 10数年前、カシュガルの街を歩いているとき、あるビルの玄関先に、風に吹き飛ばされそうになっている当局からの「張り紙」の「通告書」がありました。

 「少数民族が3人以上で集まるときは当局の許可が必要であり、無断で集まりがあれば当局に通報すべし」と。

そのあと、日本の新聞で「テロを準備していた集団を警官隊が襲撃して数人を射殺した」というニュースが躍りました。「ウイグル会議」などのインターネットのニュースでは、「あれは結婚式の準備の打ち合わせをしているところを通報されたのだ」とされています。

 そうなんです。“テロの準備を通報する”ウイグル人のスパイがいるのです。

 これもよく聞く話ですが、「ウイグル人の3人に1人はスパイだ」と。

 

 これも10年以上前のことですが、友人たちと新疆シルクロードのツアーの途中、カシュガルで国際旅行社の男性のガイドが付きました。数日の観光ののちウルムチから“明日、帰国する”という晩、ウイグル人の友人たちが日本食レストランでお別れパーティを開いてくれました。そこへ件(くだん)のガイドがカシュガルから飛行機でやってきました。わたしは「ウイグル人がわざわざ飛行機でウルムチまできて私とのお別れパーティに来てくれた」と感謝の気持ちが湧きました。

 パーティも終わりになるころ、いつものようにダンスの時間になります。すると彼は私と踊りながら「野口先生、私の手紙を東京の友人に持って帰ってくれませんか」といいます。

 

ふつうウイグル人は人前では絶対に党や政府の批判など口にしません。当局に通報されるからです。それまで彼は、いつでもどこでも「中共は打倒しなければならない。政府の幹部はくだらない奴らばかりだ」などと口を極めて公然と批判・攻撃していました。その彼から「秘密の手紙」を東京に持って帰ってくれ、ということは普通に考えても党や政府を批判するものだろうと予測できました。

 ですから私は「わたしはそういうことはしない。そういうことは自分たちでやるべきことだし、ウイグルのことはウイグル人が、日本のことは日本人がやるべきだから」と断りました。

 

 帰国後、あるウイグル人女性と話す機会がありました。彼女は来日前、カシュガルの国際旅行社の社員でした。彼と同僚でした。「あ〜、彼は安全局から派遣されてきた人ですよ」と言いました。

 もしあの時、彼からの手紙を受け取って帰国する段になって、北京の空港で荷物を調べられて、“中国を打倒せよ”などという手紙が出てきたら私はどうなっていたでしょう。慄然としました。危なく当局と彼の張った網にかかるところでした。

 このように罪のない旅行客を陥れる手段もあるのですね。そうそう、知らないで麻薬を運んで空港で捕まって死刑になった夫婦もいました。

 

 一般に中国の国家予算は国防費よりも安全局の予算のほうが多いといわれています。

ウイグル人などが安全局の為にスパイをすれば、その人の1か月分の給料に相当する金額を与えられるといわれます。民族差別で貧困にあえぐウイグル人にとって魅力的な爐△甼漫です。ですから“ウイグル人の3人に1人はスパイだ”という説がまかり通るのです。

 

 きょうの写真もすべてイメージ写真です。

 いまでは、このようなブログに写真を掲載されるだけでも、当局からにらまれるので「削除してほしい」といわれます。

 ですから、ここの写真の何枚かは私とは全く関係のない方がたです。

「大盥鶏(ダーバンジー)」という料理です。むかし、北新疆の「沙湾」というところで、

回族の男が生きた鶏を持って山の上にいたカザフ人の友人を訪ねました。

何も食べるものがなかったので、鶏を絞めて、ジャガイモと野菜を入れて食べたところ、

大変おいしかったので、2人で山を下りて商売にしました。

このおいしい料理が大評判となって、今では国中で出されるようになりました。

この人たちは、ウイグルの人びとを心を打つ音楽「十二ムカーム」の演奏者たちです。

私たちの「日本シルクロード文化センター」創立記念に演奏していただきました。

それ以来の交流です。

たまたまレストランで一緒になった方の娘さんたちです。どこの街だったか忘れました。

とてもかわいいお嬢さん姉妹でした。

ホータンのバザールのおじさん。いい笑顔です

どこで会ったのか忘れました

どこかのオアシスのバザールですね

| シルクロードの光と影 | 10:27 | comments(0) | - |
中国におけるスパイ奨励法の制定はシルクロードに何をもたらすか――

 4月21日の各紙に下記のニュースが報道されました。

 朝日では“中国 スパイ通報サイト 当局が設置「密告文化懸念」”という見出しが躍りました。全文をコピーしてご紹介します。

 

 外国人のスパイ行為を取り締まる中国の国家安全省がこのほど、インターネット上に市民からの通報サイトを開いた。習近平(シーチンピン)指導部の方針を受けたものだが、外国企業やメディア活動への影響だけでなく、社会に「密告文化」が広がるのを心配する声もある。

 サイトの説明によると、通報者は自分の名前や連絡先などを登録するが、匿名でもいい。対象者の名前や勤務先に加え、緊急度合いなども加えて通報する。有益な情報には報奨金を出すが、虚偽通報や他人を意図的におとしめる目的だった場合は処罰されるという。

 通報の対象は、外国人や組織に違法に国家機密を提供▽国家機密を含む文書や資料を所持▽デマを広め、国家の安全を脅かす▽スパイ行為に必要な機材を違法に所持・使用▽団体や企業、宗教団体を使って国家の安全を脅かす――といった行動だ。

 習指導部は2014年に反スパイ法を制定するなど、スパイ防止法を制定するなど、スパイ防止法を強化中だ。習氏は17日の会議でも「各種のリスクが国内外で連動し、拡大することを防がなければならない」と強調した。共産党に不満を持つ勢力が海外の反中国勢力と結びつけば、政権が脅かされるとの危惧がある。

 中国では、政権の転覆を扇動したなどの理由で弁護士や記者、NGO関係者らが多数、拘束されている。北京の外交関係者は「何がスパイ行為かあいまいで、正当な企業活動や取材行為まで対象になりかねない」と心配する。ネット上でも「密告文化が始まった」「外国人とのおしゃべりには注意が必要」といった書き込みが出ている (北京=延与光貞)

 

 これが朝日の特派員電です。

 

きょうはすべてイメージ写真です

110808 カラコルハイウエイのカラクリ(湖)で青年が、乗馬を進めます。

110808 食事を作っている可愛い娘さん。20歳でした。カシュガルの街

110809  クチャのスバシ故城の本堂。

| シルクロードの光と影 | 07:24 | comments(0) | - |
「新疆ウイグル諸民族の歴史的変遷と現在」

第13回 現代シルクロード研究会開催のお知らせ

 

 先日のブログで書き始めました、表記のテーマをまとめてお話しします。

 会員であるとないとにかかわらず、ご参加ください。

 このテーマは、日本と世界のシルクロードに関心のあるメンバーによる純粋に学術的な研究会です。

 ただし、日本シルクロード文化センターの不利益になることを目的とした方のご参加は、ご遠慮ください。

 

 

テーマ「新疆ウイグルの諸民族の歴史的変遷と現在」

 

 ウイグル人をはじめとした新疆のトルコ系民族は、長い間、この地を“祖国”とし、その独立を願ってきた。

 

 その独立運動の思想的政治的な源泉が“東トルキスタン共和国政府の成立と崩壊”であった。  

 今回は最近の“地獄の様相を来たしている”ウイグル人への弾圧の状況と現代的な課題を加えて解明していきたい。

 

       記

日 時 2018年3月24日(土)午後1時〜4時まで。

会 場 狛江市泉龍寺・仏教文庫会議室  

 

    201-0013 狛江市元和泉1−6−1  講師・野口 信彦
         小田急線狛江駅下車徒歩3分程度です。

 

受講費 500円(資料代)
狛江駅北口を背中にして左側を直進。突き当りが泉龍寺。

境内の右手奥にある建物が「泉龍寺仏教文庫」です。

 問合せは日本シルクロード文化センターまで 080−5483−6740

 

| シルクロードの光と影 | 03:45 | comments(0) | - |
中国の共謀罪

もう10年前になるでしょうか。中国の新疆・カシュガルの街を歩いていました。

あるホテルの入り口に「張り紙」がありました。近づいてよく読むと、「不審な人間が何人か集まっていたら当局に通報すること」などと当局の通達が書いてありました。

 

新疆では、当局の許可なくウイグル人たちが数人集まると当局に通報されます。ナゼ、通報するかというと、“通報すると報奨金がもらえるから”です。

 

数年前は、結婚式の予定の打ち合わせをしていた男たちが通報されました。そして兵士の襲撃で全員が殺されました。新聞発表では「テロをはかっていた男たちの策動を事前に防いだ」とありました。

 

これも数年前の同じカシュガルの街。みんなでモスクの前を通り過ぎていくと、10数人の男たちが血相を変えて相談をしています。私は本能的に、今流の言葉で“ヤバイ”と思いました。これから軍警と衝突することが明白な状態だったのです。

 

このような場面に外国人が遭遇することはあり得るのですが、巻き込まれてはいけません。すぐにその場を離れました。その時だけはどういうことか漢人の女性ガイド。のんびりした彼女は事情が呑み込めません。彼女をも含めて全員をバスまで急がせて乗車させました。

 

この漢人女性ガイドは、というよりも、漢族は一般的には、表面的・心情的にはウイグル人と“仲が良い”のですが、本能的に“ウイグル人を憎んでいます”。これをどう表現すればよいのか分かりませんが、いざとなると表面的な友好の表情が一変します。とにかく嫌いなのです、ウイグル人が・・・逆も同様です。

 

この2〜3年、ホータンなど南疆の街は、通りのあちこちにコンクリート製の防御壁がつくられていて、自動小銃を抱え引き金に指を添えた兵士たちが恐ろしい顔をして通行人をにらんでいます。この状態は新疆では当たり前の様相になっているようです。

 

さらに日本の旅行会社の人たちが言います。新疆はもう旅行ができない。道路でも、デパートでもスーパーでも、どこでも軍警が検問をします。車の底から荷物から何から何まですべてひっくり返して調べます。ですからなにもかもがストップです。道路は大渋滞になり、買い物は進まず、市民生活が破壊されたままだと言います。

 

信じたくはありませんが、“ウイグル人の5人に1人はスパイだ”という話。安全局がスパイになれという条件に“1カ月の収入と同じ金額を与える”ということになっているようです。貧しい生活で漢人と大きな格差のある月収ですから、「独立」の意志に燃えていなければ、1か月分の「臨時収入」は大きいものです。簡単にコロビます。

 

共謀罪について、日本では、次のように書かれています

共謀罪(きょうぼうざい)

  1. 何かしらの犯罪の共謀それ自体を構成要件(ある行為を犯罪と評価するための条件)とする犯罪の総称。米法のコンスピラシー(Conspiracy)がその例である。   (ウィキペディア)

まさに、国会を通過した稀代の悪法・共謀罪は、新疆やチベットと同じような特高警察の現代版になっています。戦争へ、軍国主義への地ならしです。

 

ここ東京で、以前は首都圏在住のウイグル人たちの交流がかなり活発でした。それが今では、ほとんどなくなりました。日本留学中あるいは生活のなかで、誰が何を言うかを中国当局や大使館がつぶさに調べています。“まずい発言や行動”があれば、一時帰国した場合、二度と日本へは戻れません。国費留学生は、取り消されます。ですから、一生、新疆へ帰れないウイグル人も何人かいます。

沈黙することによって身の安全をはかっているからです。

 

中国憲法に、衣食住の自由、集会・結社の自由など基本的人権が謳われているにもかかわらず、この牢獄のような状態をなんと表現すればいいのでしょうか。

そしてわたしはウイグルの地を愛し、シルクロードを愛するものとして言いたいことがあります。

 

・ウイグル人は、中国の地で暮らしている限りは、その国の法律を守らなければなりません。それが基本的人権です。

・それを守るために団結することが大事です。

・テロなどやっていれば、誰もあなたがたを支持しません。

・世界のあちこちに存在しているウイグル人の組織・団体が、争いばかりしていては自由や民主主義は勝ち取れません。

・そして、他の民族・漢族(かれらも迫害に遭っているのです)たちとも共通の要求で団結することです。

・憎しみや恨みなど、恩讐は投げ捨てて団結することです。

・それくらいのことができなければ、自由をかちとり、民主主義をかちとり、基本的人権をかちとることなど、できるわけがありません。

・そうしてこそ、国際的な支持が得られるのです。

 

 

 

 

 

| シルクロードの光と影 | 10:31 | comments(0) | - |
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